サービス業フランチャイズ雑感

FC業界で働く中小企業診断士が、感じたことを感じたままに書いています。

サービス業FC関連時事(2020年9月)

今月は菅新首相誕生のニュースが話題の中心でした。首相就任後に発表したデジタル庁の創設、ハンコ廃止、縦割り行政110番などスピード感のある対応は高評価のようです。フランチャイズ業界では、例年春に開催される展示会「フランチャイズ・ショー」が、コロナ禍の影響で規模を縮小し9/29・30日に行われました。69のFC本部等の団体が出展し、2日間の来場者数は6,561人と発表されています(9/29日経夕刊)。

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余暇消費のコロナ自粛が続く一方で生活必需サービスは復調の兆し

夏休みシーズンの8月は、外食やレジャーなどの余暇消費が大きく減少したままとの調査結果が発表されました(9/25日経MJ)。発表によると、8月に1度以上行ったことを消費者1,000名へ尋ねた結果、旅行と答えた人は全体の約10%、スポーツジムは4.4%、カラオケは3.9%と軒並み前年を大幅に下回ったままです。
一方、美容院やネイルサロンは利用者割合16.8%と前年を上回り復調の兆しがみえています。「Ash」などを経営するアルテサロンホールディングスは、8月の売上高減少率はそれまでの16.8%から7.1%減まで縮まりました。「QBハウス」のキュービーネットホールディングスの8月既存店売上高も前年同月比マイナス19.0%と、7月に比べ8.4ポイント持ち直しました。コロナ禍で我慢していた美容院通いをやっと始めたという人も多く、生活必需サービスには人が徐々に戻ってきているようです。
9月中旬の連休は多くの方が観光や帰省などで遠出しています。今後の消費調査の結果にも変化が現れるかもしれません。

経営資源を見直し新たなサービス展開を開始する企業も

新型コロナで失った需要を見直し、自社の経営資源を活かして新しい消費者ニーズに対応する企業が増えています。カラオケ店「JOYSOUND」を運営するエクシングは、防音性の高いカラオケルームの特徴を生かして、音楽ライブ映像や映画などを大音量で楽しめる「みるハコ」サービスを強化。「みるハコ」対象店舗は全都道府県にありますが、著名アーティストと提携し、「みるハコ」視聴者の限定グッズ付きオンライン音楽フェスチケットを発売するなど独自性を出しています(9/4日経MJ)。
また、これまで人の輸送に限定されていたタクシーでも、10月より飲食品の配送が解禁されることになりました。外出自粛で利用が減ったタクシー業界の支援と在宅勤務拡大で需要が増えた食品宅配の担い手確保を目的として、4月に新型コロナ特例として国がタクシーによる飲食品配送を認めたところ、利用が好調なため恒久的な規制緩和を行うことになったようです(9/11日経朝刊)。

教育業界のデジタル化・オンライン化がさらに浸透

学習塾業界は、コロナ禍を機にオンライン授業やAI教材の活用が一気に広がりました。東京個別指導学院は、生徒の学習履歴から理解度や集中力などをAIが解析しカリキュラムを自動作成するAI教材を提供し始めました。早稲田アカデミーは、Zoomでのオンライン授業に取り組み、対面・Web同時授業の運用ノウハウを蓄積しています。オンライン授業の開始で海外居住者の入会が増加したということです(9/8日経朝刊)。
音楽教室を経営するヤマハは、インターネットに接続した2台の自動演奏機能付きピアノを使い、ほぼリアルタイムで行える遠隔ピアノレッスンの実用化を進めています。3か月間休校していた音楽教室の新たな指導形態としてだけでなく、コロナ禍で難しくなった海外への音楽留学の代替手段としての可能性も探っているようです(9/7日経MJ)。
AI導入は教育業界だけではありません。タクシー最大手の日本交通は、グループ会社のモビリティテクノロジーズ(MoT)が開発した配車アプリの活用で、配車時間を5分と半減させました。また、MoTの新型アプリに対応した一部の車両では、乗車データや道路の規制情報などをAIが分析し「お客を拾いやすいルート」をタクシー内のタブレットに地図で示すシステムを試験導入しています(9/24日経朝刊)。

ワーケーション・シェアオフィスの差別化が始まる

新型コロナによる通勤の見直しで脚光を浴びたワーケーションやシェアオフィスにおいても、独自のサービスをアピールする企業が出始めました。
プリンスホテルは、軽井沢など5ホテルでワーケーションプランを用意。これまでにグループ利用が多かった点に着目し、会議室利用料の見直しやチーム親睦会向けのゴルフ・ボウリングなどのレジャーを無料としました(9/18日経朝刊)。また、沖縄県名護市のリゾートホテル「ザ・ブセナテラス」は、ワーケーションの宿泊客にWi-Fiモバイルルーターを無料で貸与し、部屋だけでなくプールサイドなどでもWi-Fiが使えるようにしています(9/23日経MJ)。北海道でも北洋銀行が音頭を取り首都圏の企業に対してワーケーションの誘致を始めます(9/23日経MJ)。
シェアオフィス運営のオクシイは、横浜市に開設した認可保育所にシェアオフィスを併設し、保育所利用者が安く利用できる特典を付けました。テレワークが進むなか、保育園の送り迎えに時間を取られず効率的に働ける環境を意識しています(9/25日経朝刊・神奈川)。

 

IT化やデジタル技術の活用で、ビジネスモデルや組織を変革することをデジタルトランスフォーメーション(DX)と呼びますが、対面接客が中心のサービス業も、コロナ禍でビジネスモデルの見直しに迫られています。
ビジネスモデルの見直しといえば、公正取引委員会がコンビニ本部各社に対して独禁法違反の可能性を指摘したことも、フランチャイズ業界にとっては今月の大きなニュースでした(9/3日経朝刊)。コンビニの経営モデル転換は、あらためてまとめていきたいと思います。