サービス業フランチャイズ雑感

FC業界で働く中小企業診断士が、感じたことを感じたままに書いています。

サービス業FC関連時事(2020年12月)

間もなく一年が終わり、新しい年が始まります。今年は新型コロナの影響で人々の生活が一変した一年でした。国内経済も大揺れとなり、帝国データバンク景気動向調査では、繊維製品・服飾小売、旅館・ホテル、運輸・倉庫業は低迷が続く一方、情報サービス業や家庭向け飲食料品小売りは「コロナ特需」もあり業績回復が見られます(12/30日経朝刊)。

人々の生活がこれだけ大きく変わればビジネスモデルが見直されるのは当然のことで、新たなニーズをとらえるために過去の経験にとらわれない発想が大切です。フランチャイズビジネスは業種を問わず変化への対応が求められるため、フランチャイズの動向を追うことでニーズの先にあるもののヒントが見つかるかもしれません。

GoToトラベル停止で観光・レジャーの回復遅れが明らかに

7月より開始した観光需要喚起策「GoToトラベル」キャンペーンは、12月28日から2021年1月11日まで全国で一時停止することになりました(12/15日経朝刊)。感染者の増加に歯止めがかからないことが原因ですが、これを受けて、年末年始の帰省や旅行の自粛ムードが広がり、新幹線の混雑や高速道路の渋滞も例年より緩和されています。人の移動が減った分、観光・レジャー産業への影響は大きく全国的に厳しい状況が続いています。

冬場のかき入れ時を迎えた北海道でも、夕張リゾートはスキー場・ホテルを休業、札幌市トーホウリゾートは登別温泉湯の川温泉施設について、1月4~11日を休館とすると発表しました。インバウンドが期待された「さっぽろ雪まつり」なども軒並み中止となりました(12/25日経朝刊・北海道)。

コロナの影響で業績が急速に悪化した藤田観光は、希望退職を募り人件費削減に乗り出すほか、2021年以降のホテル開業計画も、10ホテルのうち7ホテルを中止しました(12/9日経MJ)。旅行業のHISも今期最終赤字を計上し、国内・海外ともに約100店舗の統廃合に踏み切ります。リモート接客やオンラインツアーで財政基盤の建て直しを図る予定です(12/16日経MJ)。

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ホテル業界が打ち出すニューノーマル下のサービスプラン

インバウンドやビジネス利用が激減し、ウエディング需要も縮小したホテル業界は、ニューノーマルに合わせたプランを続々と提案し収益源を模索しています。

ホテルニューオータニ幕張は、結婚式と披露宴を別々におこなう「2部制ウエディング」を12月から打ち出しました。1日目は家族との挙式や会食、その後ホテルに宿泊し、2日目は友人との披露宴を実施するプランで、一度に集まる人数を減らすのが狙いです。浦安にあるシェラトン・グランデ・トーキョーベイ・ホテルは、挙式後にホテルの庭などで写真撮影だけをおこない、披露宴をおこなわないプランを提案。このほか、結婚式や披露宴をリモート視聴できるプランも用意して、地方に住む高齢の親戚らが会場に行かなくても2人の様子を見られるようにしました(12/25日経朝刊・千葉)。

ワーケーションの強化も多くのホテルで見られます。プリンスホテルJR東日本と連携し、苗場や雫石などスキー場近隣のプリンスホテルと往復の新幹線を割安に利用できるプランや、JR東日本パーソネルサービスの企業研修と宿泊を組み合わせて提供します。このほか、セールスフォース・ドットコムの日本法人とも連携し、システムやアプリ開発をおこなう予定です(12/25日経MJ)。

スーパーホテルは、女性専用客室の導入を約50施設に広げます。高級美容機器ブランドのドライヤーや身体への負荷が少ないマットレス・枕などアメニティグッズを備え、家事や仕事のストレスを抱える女性の需要を狙います(12/12日経朝刊・関西)。

苦戦するホテル業界の一方で、民泊仲介大手のエアビーアンドビーは、米ナスダック市場に上場しました。公開価格は当初想定より高い1株68ドルで、時価総額は406億ドル(約4兆2600億円)となり、世界的なホテルチェーンのヒルトン・ワールドワイド・ホールディングス(約300億ドル)を上回り、マリオット・インターナショナル(約430億ドル)に並ぶ時価総額水準となりました(12/11日経朝刊)。

フィットネスクラブは「開放型」「オンライン」を提案

成田ゆめ牧場」を運営する秋葉牧場は、開放型のスポーツジム「ファームステーションジム」を全国展開します。12月17日に千葉県八千代市内の住宅街立地に1号店を開業。牛舎の仕組みを応用して、壁がなく柵で囲まれた吹き抜け構造とし、牛舎で使う強力な換気扇を設置しました。スタッフは配置せず、無人運営とのことです(12/2日経朝刊・千葉)。

フィットネス関連スタートアップのミラーフィットは、鏡とディスプレーが一体になった機器を開発しました。身長大の姿見に、動画のコーチの姿と鏡の自分の姿を同時に映しながらフィットネスに取り組める形式です。ミラーフィットはもともとパーソナルトレーニングジムを経営していましたが、新型コロナで一時休業になり、機器の投入でオンラインフィットネス事業に注力します(12/29日経朝刊)。

24時間ジム「エニタイムフィットネス」を運営するファストフィットネスジャパンは、16日に東証マザーズに上場しました。初値は公開価格を750円上回る3000円で、終値は3440円となりました(12/16日経電子版)。

デジタルディバイドの解消がサービス拡大の鍵を握る

新型コロナで様々なサービスがオンライン化される中、デジタルサービスの利用に慣れていない人々へのアプローチが注目されています。政府は来年度から、スマートフォンでの行政手続きができるようにするための講座を全国1000カ所で開催します。NTTドコモなど携帯大手に委託し、主に携帯電話の販売店舗などで確定申告や自治体サービスの申請方法を教えるそうです(12/28日経夕刊)。

フリマアプリのメルカリは、アプリでの商品の探し方や出品方法を教える「メルカリ教室」を、ファミリーマートのイートインスペースを利用して始めました。メルカリ教室は2019年9月から実施し、これまでショッピングモール等の「メルカリステーション」と呼ばれる拠点などで開催していましたが、今後導入店舗を増やし未経験者との接点を増やす予定です(12/15日経朝刊)。


毎年12月初旬に日経MJ紙上で発表される「2020年ヒット商品番付」では、新型コロナの影響から生まれた商品やサービスが数多くありました。今まであれば緩やかに移行していくデジタル化の流れがコロナで一気に到来したようにも感じます。来年は、デジタル化された様々なサービスが選別されていく最初の年になると思われます。フランチャイズという視点から、不易流行を見極めていきたいと考えています。