サービス業フランチャイズ雑感

FC業界で働く中小企業診断士が、感じたことを感じたままに書いています。

サービス業FC関連時事(2021年6月)

2021年の上期ヒット商品番付が、6月16日の日経MJで発表されました。非接触型サービスのニーズに応える「買い物テック」や、飲食店での酒類提供禁止から「ノンアルコール飲料」が売れ筋となるなど新型コロナの影響を受けた商品が上位になるなか、東の横綱は「サステナブル商品」。「モノ消費」「コト消費」から「イミ消費」への変化が、この切り口からもはっきりと見えてきます。

シェア争いが激化する料理宅配サービス

コロナ禍で急激に市場が成長している料理宅配サービスのシェア争いは、今月も多くの記事となりました。海外企業の参入では、フィンランド発のウォルトが甲信越地方では初めてとなる新潟市でのサービス提供を始め(6/10日経朝刊・信越)、米最大手のドアダッシュが日本に上陸、仙台市を皮切りに展開エリアを広げていく予定です(6/10日経朝刊)。

国内企業も、出前館が全国47都道府県の宅配網を構築、ファミリー層を中心ターゲットとして、地元飲食店へのコンサルティングを強化する計画です(6/25日経MJ)。国内シェア3位のmenuは、KDDIと資本業務提携し、約50億円の出資を受けて加盟店の増加、「auペイ」によるスマホ決済を強化し、顧客データの分析技術で好みの飲食店提案や割引クーポン配信などサービス拡充を計画しています。

フランチャイズとの関連では、配達員となる事業主の管理体制の問題が浮き彫りとなっています。ウーバーイーツ日本法人は、不法残留している外国人を配達員とし不法就労を助長したとして書類送検されました(6/22日経夕刊)。配達の質だけでなく、ギグワークの代表格とされる配達員との契約や管理の在り方も今後の課題です。

進化を続ける農業関連のフランチャイズ

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アグリテックと呼ばれる農業のIT化が進む中で、栽培方法や販路などをパッケージ化してフランチャイズ展開する動きが出始めています。北海道で大規模酪農を営むカーム角山は、自動搾乳ロボットと絞った乳から牛の健康管理をおこなう仕組みを作り、1頭あたりの乳量増加を実現しました。FC展開はこれからですが、未経験の人でも酪農経営ができるノウハウ・体制を構築しています(6/17日経朝刊・中部)。

農作業の癒し効果をサービス化する取組みも活発で、滞在型市民農園クラインガルテン妙高では、ワーケーションに農業を組み合わせた「アグリワーケーション」サービスを提供しています。農園リゾート施設を営むザファームでは、ファームセラピーという宿泊プログラム販売を開始しました。農業とアウトドア・アクティビティやヒーリングプログラムを盛り込んだ滞在型プランによりストレスケアを図ります(6/19日経夕刊)。

サービス業FCに広がるアプリ活用の流れ

新型コロナの影響で非対面型サービス開発が進むサービス業では、アプリやインターネットでのサービス提供をあらゆる業種でおこなうようになりました。「いしど式」そろばん教室を展開するイシドは、自社開発アプリによるタブレット学習を導入。首都圏の直営教室に通う約5000名の生徒にタブレットを無料で配布しました。当面はリアル学習を補い、復習や学習履歴の確認に使用します(6/2日経朝刊・首都圏千葉)。個別指導塾「フリーステップ」を運営する成学社は、生徒の学習データを端末で確認できる「マイステップログ」サービスを始めました。学習の成果や塾の取り組みを知りたい保護者らのニーズに応え、生徒の志望校に合わせた学習方法や指導などの改善につなげます(6/30日経MJ)。

さらに、「小さなお葬式」を展開するユニクエストは、葬祭用品の法人向け電子商取引事業に本格参入します。「ユニコレ」と名付けたサイトから、遺影用の額縁や骨つぼなど葬儀に必要な約400の商品を取り扱うとのこと。同社は全国の4000以上の葬儀場と提携し、葬儀を依頼したい人を各地域の葬儀会社に紹介するサービスを手掛けています(6/11日経MJ)。

 

感染者数が一進一退を繰り返すなか、4年に1度の大イベントがいよいよ始まります。先行きの不透明さとは関係なく、時間は流れて新しいビジネスが次々と現れています。企業規模に関わらず多くの企業が来年以降のポストコロナを見据えて動き、成果を出している現状を、肯定的にとらえていくべきと考えています。