サービス業フランチャイズ雑感

FC業界で働く中小企業診断士が、感じたことを感じたままに書いています。

サービス業FC関連時事(2021年10月)

緊急事態宣言がようやく解除され、日常生活が戻ってきました。ただ、肌感覚でいえば、マスクを付けながらの外出や買い物は変わらず、オンラインでの商談やテレワーク勤務は変わらずということで、コロナで変化したこと、変わらないことがはっきり見えてきたという感じでしょうか。

サービス業FC企業の決算では、パーク24は時間貸し駐車場やカーシェアの稼働が低迷して2021年10月期の最終損益が130億円の赤字見込みを発表(10/16日経朝刊)する一方、スタジオアリスは七五三や成人式の前撮り撮影など高価格商品が好調で、最終損益が8億4900万円の黒字に転換し(10/15日経朝刊)、業種による業績の二極化が見られます。前回の記事で取りまとめたホテル業でも、運営受託やフランチャイズ事業が中心のマリオットホテルが8400万ドルの黒字確保と、他ホテルとの違いが際立っているようです(10/12日経朝刊)。

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さて、毎年10月は日経MJで「サービス業調査」の結果が発表されます。FC展開している企業を含め様々なサービス業36業種を対象に、2020年度(20年8月期~21年7月期決算)の調査結果について、今年は10/22・29の紙面で掲載されましたので、ご紹介します。

2020年度減収は28業種に拡大する一方保育・福祉などは増収

日経MJ第39回サービス業調査」によると、2020年度の売上高について、19年度と比較可能な848社では15.4%減の15兆2080億円で、6期ぶりのマイナスとなりました。

減収幅が最も大きかったのは「高速バス」で、73.2%減。「遊園地・テーマパーク」60.8%減、「結婚式場・手配」60.6%減など、6割以上減収となる業種もありました。緊急事態宣言の発令に伴う休業や、人の移動が抑制されたことによる需要の減少が響きました。

一方で増収になった業種もあります。増収幅が最も大きかったのは「保育サービス」(8.5%増)で、福祉サービスや家事支援なども6%以上の増収となりました。介護や保育など生活に不可欠な「エッセンシャルワーカー」の業種は需要が底堅く、利用控えなども少なかったと見られます。

今後の見通しとして、足元ではすでに業績が回復している企業も出てきています。「新型コロナ影響前の水準に売上高が戻る時期はいつごろだと思うか」という問いに対し「既に回復している・上回っている」と回答した企業は36業種全体で16.7%となりました。一方で「戻ることはない」と回答した企業も8.4%あり、コロナによる需要の明暗が分かれています。

学習塾は教育需要の底堅さで微減、オンライン授業の浸透目立つ

学習塾・予備校の2020年度の売上高は前年度比3.3%減と19年度から6.8ポイント悪化しました。20年4~5月にかけての休校が主な減収要因です。しかし、業種全体の15.4%減に比べると落ち込み幅は小さく、小学校における英語教育やプログラミング教育の本格化、大学入試改革などの教育需要の底堅さ、各社のオンライン授業の導入など積極的な取り組みが奏功しました。

「スクールIE」などを運営する売上高首位のやる気スイッチグループは1.2%増、2位は「明光義塾」などを手掛ける明光ネットワークジャパン(9.2%減)。3位は「学研教室」など運営の学研HDで、3.7%減となりました。

学研HDは4月、中学生向けのオンライン学習塾「Gakken ON AIR(学研オンエア)」を開校。最大の特徴はリアルタイムの双方向授業で、生徒は自宅でも教室で授業を受けているような緊張感が保てます。自宅学習の面でも工夫をこらし、独自に開発したAI搭載のデジタル教材を活用して、一人ひとりの理解度や進み具合に合わせて課題を出題できるようにしました。

感染防止コストを転嫁して値上げした企業が全体の約1割に上る

サービス業調査では、1年前と比べサービスの料金を変更したかどうかを聞いています。その結果、「引き上げた」企業は9.2%で、引き上げた幅は「5%未満」が最も多く44.0%。「5~10%未満」は27.4%でした。業種別で見ると、料金を上げた割合が最も多かったのは「クリーニング」60.0%、「スポーツ施設」33.3%が続き、「会員制リゾートクラブ」25.0%も多くなりました。

スポーツ施設でみると、ルネサンスは21年4月にフィットネスクラブの料金を月額990円値上げしました。東急スポーツオアシスも同5月に月額1100円の値上げを実施しています。

値上げの理由は「客単価を上げるため」や「サービスの品質向上のため」の割合が高く、「興行場」や「保育サービス」「スポーツ施設」などを中心に約2割は「感染防止策のコストを転嫁」と回答しています。

一方、料金を引き下げたと回答した企業は3.9%。業種別で目立ったのは「貸し駐車場」「ホテル」でした。ホテルは新型コロナの影響でインバウンド需要が蒸発し、出張を控える動きも広がり、ビジネス目的の利用が多い都市型ホテルを中心に値下げが相次ぎました。今後料金を改定する予定については、全体の7.5%が「値上げする」と回答する一方で、「値下げする」という回答は0.5%にとどまりました。

ホテルや遊園地などレジャー産業はコロナで需要半減

ホテル業の2020年度売上高は、19年度と比較可能な55社で58.3%減の4803億円となりました。インバウンド需要が無くなり、テレワーク導入による出張利用も減少した結果稼働率が低迷。2年連続のマイナスとなりました。

特に、ビジネスホテルは都市部を中心にコロナ禍の影響を強く受け、売上高2位の「ドーミーイン」を運営する共立メンテナンスは41.4%減の462億円、3位の東横インは54.6%減の430億円でした。

他のレジャー産業でも、遊園地・テーマパークの売上高は前年度比で60.8%減と大幅減少。新型コロナの影響で、休園や入園者数制限が響きました。売上高首位のオリエンタルランドでも、20年度の売上高は1342億円で前年度比65%減と大幅に減りました。来場者数は前年度比74%減の756万人で開園以来過去最低とのことです。

10月以降は宣言の全面解除で客足の回復が見込まれますが、レジャー消費の先行きは不透明感が依然として強いようです。

 

緊急事態宣言が解除され、10月は「GoToイート」など各自治体による観光・飲食の割引事業の再開が毎日のように記事になっています(10/4日経朝刊・他多数)。衆議院選挙も済んだ11月からは、いよいよ年末の足音が聞こえてきます。多くのサービス業FCでコロナからの回復が期待されています。