サービス業フランチャイズ雑感

FC業界で働く中小企業診断士が、感じたことを感じたままに書いています。

サービス業FC関連時事(2021年8月)

今月こそは終わるか…と期待していた緊急事態宣言は来月まで延期となり、もはや緊急事態が日常となっています。今年に入り、東京都で緊急事態宣言もまん延防止措置も発出されていない「ふつうの日」は、年始の数日と春休み前後のたった28日です。

コロナウイルスはいよいよ小さい子供が発症するまで変異を遂げ、ワクチン接種者も陽性となり、今はいつ誰が罹ってもおかしくないという一種の諦め感も出ています。

お盆期間中の新幹線予約は、JR東日本管轄は19年比で27%、東海道新幹線指定席は19年比20%となりました(8/15日経電子版)が、近場でキャンプやウォーキングなどアウトドアを楽しむ人々はかなり増えている肌感覚です。

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トップカルチャーコワーキングスペース事業開始

新潟県を中心に「蔦屋書店」など74店舗を展開するトップカルチャーは、新潟市内の蔦屋書店にコワーキングスペース「シェアラウンジ」を開業します。約70席ある室内には会議用スペースや書籍・雑誌コーナー、飲料サービスを備えています(8/28日経朝刊・信越)。

同社は、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)のメガフランチャイジーですが、今年7月、FC展開しているDVDレンタル事業から撤退することを表明しています。レンタルに代わる事業展開のひとつが今回のコワーキングスペース運営です。

新型コロナの影響で、コワーキングスペースやシェアオフィスなどフレキシブルオフィス市場は急速に拡大しています。リモートワークが普及したことで、集中できる環境を求めている人が増えているほか、VUCA時代の変化に対応しやすいという利点が注目されています。

ギグワーカーや遠隔地での副業など働き方も変化して、都心だけでなく郊外にも需要が広がっているなかで、セキュリティ面の安心感や会員の定着化などでこれまで蓄積したCCCのノウハウが活きてくる場面は多いと思われます。

進研ゼミ会員のビッグデータ赤ペン先生指導力向上

ベネッセHDは、「進研ゼミ」会員200万人の学習履歴ビッグデータを活用し、添削を担う1万人の「赤ペン先生」の指導力を磨く取組みを進めています(8/5日経朝刊)。

答案の添削スキルは、回答間違いの原因推測や、回答時の生徒のクセをつかむ工夫が必要とされ、紙の答案では、プリントに残った消し跡なども頼りにしていました。プリントがタブレット学習に置き換わり、消しゴムの跡はなくなったものの、解答時間などの学習行動記録から課題の進捗、問題の読み込み具合などをAIで独自に算出できるようになったそうです。

これらの情報を赤ペン先生向けに提供し、データに基づく指導を可能にしました。郵送の時は約2週間だった添削期間は最短翌日に短縮され、答案提出率も改善されました。21年3月の生徒継続率は前年比4%増と成果も出ています。

エドテックと呼ばれる教育のDX化が進み、IT企業が次々と教育業界に参入するなかで、AIによる弱点克服や学習計画作成だけでは競合との差異化が難しくなると判断し、直接生徒と向き合う赤ペン先生指導力を磨く仕組みとしてAIを活用した着眼点は教育の本質をしっかりと突いています。

買い物リハビリプログラムを提供するFCが出店加速

「ひかりサロン」の名称で介護事業を展開するショッピングリハビリカンパニーが出店を加速させています。新型コロナの影響で中断していた開店を6月から再開し、現在11店。21年度中に18店を目指すとのことです(8/5日経朝刊・中国)。

「ひかりサロン」の特徴は、「ショッピングリハビリ」と呼ばれる、スーパーでの買い物を通して高齢者の認知症を予防する独自のプログラムです。買い物という行動で足腰を動かし、店員とのコミュニケーションやお金の管理によって脳の活性化を促すもので、作業療法士の資格を持つ同社取締役の杉村氏が考案しました。スーパーマーケットでの買い物に利用するカートも、足腰が弱い人でも転倒しにくいよう独自開発しています。

外出や買い物をリハビリの一つに取り入れることは、以前から介護施設自治体などでおこなわれていましたが、ショッピングリハビリカンパニーは独自商品やプログラム化、医学的検証などによってフランチャイズ・パッケージとしています。

近年、大規模ショッピングモールでは通路にウォーキングコースを設けているところもあり、スーパーマーケットと介護は多くの接点がありそうです。