サービス業フランチャイズ雑感

FC業界で働く中小企業診断士が、感じたことを感じたままに書いています。

サービス業FC関連時事(2020年11月)

日経MJが毎年おこなっている「第38回サービス業調査」の結果が、11/4・11/11付の日経MJ紙上で発表されました。今月はこの記事を中心としてフランチャイズ業種の観点からまとめます。以下、別途記載がない限り同記事が出典です。

「第38回サービス業調査」調査概要と総括

「第38回サービス業調査」は、日経MJが主要サービス業36業種を対象としておこなう、2019年度(2019年8月期~2020年7月期)の企業決算状況等のアンケート調査です。36の業種は幅広く、放送や交通などFC業態になりにくい業種も含まれています。

調査対象35業種(旅行業は「取扱高」のため除外されている)の2019年度売上高は、回答企業944社の合計で20兆5004億円となりました。前年度と比較可能な934社では0.4%増と5期連続プラスとなりましたが、伸び率は前年の4.3%増から3.9ポイント下落しています。

なお、回答企業の多くは3月決算のため、新型コロナの影響が本格化した今年4月以降の業績が反映されない企業もあります。その中でも、売上高が前年度実績を超えたのは17業種にとどまっており、前年度の31業種と比べると大幅に減少していることがわかります。

さらに、2020年度の売上高見込についても調査しており、23業種が減収を予測しています。減少幅が最も大きいのは結婚式場・手配で59.1%減でした。一方、増加見込の業種は、婚活・結婚情報サービス、保育サービス、訪問福祉サービス、有料老人ホーム、カーシェアリング、住宅リフォーム、コインランドリー、家事支援となりました。

f:id:in_a_bar:20201130004709j:plain

コロナ禍でも売上高が増加した生活関連サービス業

新型コロナが生活に与えた最も大きな変化のひとつは、人々の在宅時間の増加です。その影響もあり、住宅や家での暮らしに関する業種は売上を伸ばしました。テレビドラマで認知度が向上した家事支援は、調理や清掃などのサービス内容を買い物や洗濯など家事全般に広げて、共働き世帯や外出を控える人々の需要に応えています。

売上高は、ダスキンの「メリーメイド」が前年度比1.2%増加、HITOWAライフパートナーの「おそうじ本舗」が15.0%増加です。住宅リフォーム業界も、昨年の消費増税の駆け込み需要や「次世代住宅ポイント制度」により需要が下支えされ、前年度比3.2%増加となりました。

カーシェアは、コロナ禍以降、近所の買い物だけでなく旅行など比較的長時間の利用が増加しました。その背景には、コロナ禍で先々の予定が立てにくくなった人が増えている点があり、出発直前でも空きがあればすぐに使えるカーシェアの利便性が注目されています。

カーシェア最大手のパーク24「タイムズカーシェア」は、2020年7月以降の売上高は前年同期比で増加に転じ、オリックス自動車が運営する「オリックスカーシェア」も、10月1日~20日の個人利用売上が前年同期の1.5倍に達したということです。また、買い物や旅行以外にも、電車通勤を避けたい会社員のニーズも狙い料金体系の工夫を図ります。

一方で、カーシェアの利便性の高さが悪用された事件も起こりました。カーシェアの会員カードを母親から借りて無免許運転を繰り返していた少年が衝突事故を起こし、なりすまし対策を強化する対応が求められています(11/24日経朝刊)。

オンラインを活用した新サービスに多くの業種が着手

今回の調査で、学習塾・予備校業界の2019年度売上高は、前年度比3.5%増加となりました。小学校での英語教育・プログラミング教育の本格化や大学入試制度の変更で、教育への関心は依然として高い状態です。しかしながら、新型コロナで教室の一時休校など影響の直撃を受け、オンライン講義を導入する企業が増加し、今では大多数の学習塾が何らかの形でオンライン対応を行っています。

北大学力増進会」を運営する進学会ホールディングスは、2021年1月から浜学園と共同で中学生を対象としたオンライン塾「5KAKU(ゴーカク)」を開講します(11/11日経朝刊・北海道)。秀英予備校でも、来春受験を迎える中学3年生の受講講座にZoomを導入し、新型コロナの影響の長期化をにらんで在宅での学習サービスを増やしています(11/20日経朝刊・静岡)。

オンラインによる新規サービスに活路を求める業種は、その他にもスポーツ施設や保育サービス、旅行業など多く見られます。カーブスホールディングスは、9月からオンライン体操教室「おうちでカーブス」を始めました。外出自粛での休退会増加に対応し、会員数回復のきっかけを作る考えです(11/5日経朝刊・北関東)。旅行業大手HISの沢田会長は、第22回日経フォーラム「世界経営者会議」での対談でオンラインによるリモートトラベルなど新事業を打ち出しました(11/11日経朝刊)。


新型コロナ「第3波」の拡大は今も続いており、各都道府県で1日の感染者数が過去最大となっています。政府は「GoToトラベル」事業について、感染が急拡大している札幌市や大阪市を除外するなど制限を開始し、「GoToイート」についても、10都道府県が新規の食事券発行を一時停止しました(11/24・11/28日経朝刊)。

一方で、検査体制の整備により早期入院、早期治療が確立されつつあり、感染による重症化率は低下しています。これは、コロナと日々対峙する医療従事者や研究者の尽力と闘いのおかげです。医療と経済の難しいかじ取りを乗り越え、安心して生活できる「ニューノーマル」が早く訪れるよう願うばかりです。