サービス業フランチャイズ雑感

FC業界で働く中小企業診断士が、感じたことを感じたままに書いています。

サービス業FC関連時事(2020年10月)

新型コロナウイルスの感染が欧米で再拡大し、各地の都市が外出制限や飲食店の営業禁止に踏み切る一方、日本国内の感染者数は9月以降横ばいが続いています。

そのような中、10月の「日経消費DI」調査結果が発表され、業況判断指数(DI)は、7月調査に比べ15ポイント改善しマイナス39となりました。業種別にみると、旅行はマイナス95、興行・アミューズメントはマイナス87、スポーツ・健康・教養はマイナス71と、サービス業種は引き続き厳しい見通しが続いています(10/30日経MJ)。

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集客型サービス業FC各社の苦しい決算が続く

ひとつの場所に多くの人を集めてサービス提供する業態は業績の回復が遅れています。女性向けフィットネスジムを運営するカーブスホールディングスは、通期の連結純利益が前期比79%減の7億6400万円になったと発表しました。1年前に86万人だった会員数は、新型コロナによる休会者増加などにより8月末時点で60万人に減少していますが、店舗数は2,000店舗を維持しています(10/30日経朝刊・北関東)。

ブライダル業界も同様に厳しく、結婚式場のテイクアンドギヴ・ニーズは、2021年3月期の営業赤字は120億~150億円と見込んでいます(10/5日経MJ)。挙式も宴会も行わない「ナシ婚」が広がる中、ブライダルのモデルを転換・多様化する必要に迫られています。また、アミューズメント業界では、オリエンタルランドが上場した1996年以降で初めて通期での最終赤字見込を発表しました。経費削減を進めるほか、時期によってチケット価格を変える「ダイナミックプライシング」の導入も検討しています(10/30日経朝刊)。

アウトドア需要の拡大を活かしたサービス開発

新型コロナの影響で、密集・密接・密閉の「3密」を避けられるアウトドア需要が拡大しており、FC本部のサービス開発が続いています。

注文住宅のユニバーサルホームは、アウトドア愛好家向けの住宅を設計・販売します。アウトドア用品ブランド「DOD」と連携し、SUV車やキャンプ道具をゆったり収納できる大きめのガレージや、アウトドア用品の手入れができる床暖房完備の土間の設置など、愛好家が求める住宅設計をデザインや間取りに生かしました(10/16日経MJ)。中古車レンタルのワンズネットワークは、キャンピングカーの時間貸しサービスを始めました。車内に備えたテーブルや簡易キッチンなどを利用した少人数の食事会やテレワークなどの需要を見込みます(10/23日経朝刊・千葉)。

オープンスペースと食事を組み合わせるサービスはホテル業界でも広まっており、星野リゾートが運営するリゾナー那須では、自然の中で朝食を楽しめる「朝食ピクニック」が人気となっています(10/5日経夕刊)。

GoToトラベルキャンペーンは地方観光地を中心に好影響

7月から始まった政府の観光業界支援策「GoToトラベル」キャンペーンは、地方を中心に効果が見え始めています。キャンペーン利用者は9月末までで2,518万人とされ、観光庁「宿泊旅行統計調査」では、9月の日本人宿泊者数の前年同月比マイナス幅は8月より14.4ポイント改善しています(10/30日経朝刊)。

ホテル業界は、レジャー客の予約が戻りつつある一方で、ビジネスや外国人観光客向けサービスは苦戦しています。その対応策として、スーパーホテルは、語学留学やワーキングホリデイを中止した人などを対象にオンライン英語学習付きの宿泊プランを販売します(10/23日経朝刊・関西)。プリンスホテルは法人向けのワーケーション事業を始め、ホテル館内の会議室やアクティビティの割安利用を武器に企業へ売り込み、GoTo以外の需要をつかむ工夫をしています(10/23日経MJ)。

GoToキャンペーンは、制度設計の弱点など混乱も指摘されていますが、春先から全国的な自粛ムードが定着した中で、外出や旅行に対する後ろめたさを軽減する効果はあったようです。

Withコロナでの業態を磨き続けるサービス業FC

新型コロナによる市場や顧客の意識・行動の変化は、3度目の「ニューノーマル」と呼ばれています。その中でFC本部は従来のパッケージを見直し、新しい付加価値を提供し続けています。

カラオケ店「まねきねこ」を運営するコシダカホールディングスは、1人カラオケ専門店「ワンカラ」の室内換気システムを刷新し「ゼロ密カラオケ」の安心感を訴え集客を進めています。ワンカラの売上は回復傾向にあり、9・10月は前年並みになった店舗もあるようです(10/23日経朝刊・北関東)。岡山県を中心にフィットネスジム「W-FIT24」などを運営するエヌ・シー・ピーは、両備システムズと連携し筋肉の状態を可視化できるシステムを開発しました。来春を目途にジムのほかリハビリテーション施設や介護施設などに展開します(10/20日経朝刊・中国)。

溶接体験の工房をフランチャイズ展開する企業も登場しています。福井県の長田工業所は、観光客らに溶接体験サービス「アイアンプラネット」を運営していますが、9月に静岡県沼津市でFC第1号店がオープンし、2021年夏までに神奈川県や富山県などに広げる計画です(10/24日経朝刊・北陸)。

 

業績の回復は業種によってまちなちで、来年後半以降と予想する企業も多いようです。トレンドをいち早くつかむフランチャイズ業界において、サービス業種では「安心感」というひとつの方向性が見え始めています。これから年末年始にかけて、消費者の志向がどこに向かっていくのか注目されます。