サービス業フランチャイズ雑感

FC業界で働く中小企業診断士が、感じたことを感じたままに書いています。

サービス業FC関連時事(2020年8月)

今月は上場企業各社の4~6月期決算状況が次々と発表されました。新型コロナウイルスは日本だけでなく世界中の企業に影響を与え続けており、上場企業の2021年3月期業績予想開示の集計では、純利益が前期比36%減となり、リーマン・ショック時の2009年3月期以来の落ち込みとなる見込みです(8/11日経朝刊)。国内全体で業績の悪化が顕著となるなか、サービス業フランチャイズ関連企業もその例外ではありませんでした。

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休校と夏休み短縮で苦戦する学習塾

学習塾大手7社は、すべて四半期業績が赤字となりました。もともと学習塾業界は、4~6月期は学生の長期休みがなく売上が落ちやすい時期ですが、コロナによる緊急事態宣言発令で休校を余儀なくされ、オンライン授業への移行・教室の感染防止対策での出費がかさんだことも赤字幅が拡大した原因となりました(8/12日経朝刊)。


さらに、小中学校や高校も休校が長引き新学期の始まりが遅れた結果、夏休みが2週間程度と短くなる学校が現れました。自治体により期間もばらばらで、学習塾は対応に工夫が必要とされます。「開成教育セミナー」の成学社は、夏期講習会の新規生受講料を低学年は無料し、中学3年生でも半額にしています。「第一ゼミナール」のウィザス・「馬渕教室」のウィルウェイなど関西大手塾も授業料を引き下げていますが、通塾を控える傾向も根強く集客は苦戦しそうです(8/8日経朝刊・関西)。

 

ホテルは「テレワーク」や「ワーケーション」に活路

ホテル業界の決算も、コロナによる観光業への深刻な打撃の影響を受けています。米ホテル大手3社の4~6月期決算は、最終赤字の合計が9億ドル(約950億円)に膨らみました。米国内は8月になりようやく新規感染者の減少傾向がみられるようになりましたが、世界的にはまだ先行き不透明な状態です(8/8日経夕刊)。


そのような中、稼働率が低下した国内のホテルでは、コロナで「ニューノーマル」となった「テレワーク」や「ワーケーション」に新たな活路を見出して取組みを進めている企業が増えています。東急リゾーツ&ステイが運営するリゾートホテルでは「オキナワーケーション」プランを販売する一方、「東急ステイ」など都市型ホテルではテレワークに特化しベッドを置かない部屋を準備しています(8/28日経MJ)。また、県外からの観光客減少を補うため、地元の人々の「プチ贅沢」ニーズをとらえ集客を確保しているホテルも出てきています。

 

新型コロナがもたらす需要増加と新たな挑戦

一方で、コロナの影響で需要が増加した業種もあります。その一つが、キャンプやグランピングなど「三密」を避けられる屋外レジャーで、近年のアウトドアブームをさらに後押ししています。千葉県のザファームは、手ぶらでグランピングやカヌーなど野外アクティビティのほか、農作物の収穫体験を楽しめる「農園リゾート施設」を運営し、首都圏を中心に年間25万人を集める人気施設となっています。今後、温泉施設の運営企業との資本業務提携により、フランチャイズ方式での全国展開を目指すようです(8/19日経MJ)。


また、全国で保育施設運営を手掛けるキッズコーポレーションは、明光ネットワークジャパンからシンガポールで日系幼稚園を運営するCOCO-RO社を買収し、海外進出に挑みます。シンガポールのほかに中国でも現地企業と戦略パートナーシップ契約を締結し事業展開を開始します(8/28日経MJ)。

 

今まで当たり前のように継続していたビジネスモデルを大きく変えることになった新型コロナは、一方で「ニューノーマル」として新たなニーズを生み出しています。サービス業各社が今後どの分野に進出していくか注視していきたいと思います。